プログラミング教育への準備、地域ごとに格差。地方の課題

 文部科学省が6月22日に発表した「教育委員会等における小学校プログラミング教育に関する取組状況」によると、小学校プログラミング教育に対して「特に取り組みをしていない」割合が、北海道で82%ともっとも多く、地域によってプログラミング教育の準備に格差が出ました。

 このアンケートは全国の都道府県および市区町村の教育委員会1,780団体を対象に小学校プログラミング教育への取組状況を調査し、市区町村教育委員会722団体の回答を集計。回答時点は平成30年2月1日で、取組状況は「特に取組をしていない(ステージ0)」、「担当を決めて検討中(ステージ1)」、「研究会や研修を行っている(ステージ2)」、「授業を実施している(ステージ3)」の4つに分類しました。

 こうした中で2020年度の小学校でのプログラミング教育必修化に向けた取組み状況は「プログラミング教育の情報を収集している。もしくは特に取組はしていない」が69%ともっとも多く、「教育委員会内で、プログラミング教育の担当を決めて今後の取組を検討しているが、実施はしていない」20%、「所管する小学校教員に対して、プログラミング教育の研修を行っている」15%、「教育委員会主導もしくは学校主導で、一部の小学校でプログラミング教育の授業を実践している」14%などが続きました。「小学校全校でプログラミング教育の授業を実践している」はたった2%となりました。

 また全国を8ブロックに分けて集計すると、「特に取組みをしていない(ステージ0)」の割合は、「北海道」が82%ともっとも多く、「東北」73%、「九州沖縄」64%、「中部」59%、「四国」56%、「近畿」48%、「中国」40%、「関東」34%の順に多い結果になりました。一方、「授業を実施している(ステージ3)」は、「関東」が26%ともっとも多く、「近畿」23%、「中国」18%などが続きます。

 プログラミング教育実施に向けた取り組みをしていない理由としては、「プログラミング教育の趣旨、目的、基本的な考え方などの情報が不足している」が60%ともっとも多く、「教育委員会内部で、プログラミング教育を担当できる人材が不足している」53%、「プログラミング教育を推進するための予算(ICT機器等の整備等)が不足している」45%、「プログラミング教育を推進するための予算(教材費等)が不足している」38%と続きました。

 こちらも地域別に理由をみると、どの地域も「プログラミング教育の趣旨、目的、基本的な考え方などの情報が不足している」が過半数を占めることに。特に北海道(76%)や中国(77%)が7割を越えることに。関東や四国では「教育委員会内部で、プログラミング教育を担当できる人材が不足している」ことがもっとも多い理由となりました。

プログラミング教育の地域格差がもたらす問題

 このようなプログラミング教育の地域格差は非常に深刻な結末を招きかねません。なぜならば、情報通信産業は地方を救う救世主であると言われているためです。

 情報通信産業がなぜ地方を救うのかといいますと、これはこの産業全体の特徴がカギとなります。それは他の産業に比べて必要とされるインフラのコストが大幅に低いためです。

 第一次産業はそれぞれの農産物や水産物にあった土地の特徴が必要であり、こちらは新田をつくったり、品種改良を進めたりといったこともできますが、基本的には人の手でつくられるインフラではどうにもなりません。輸送に関わる鉄道や道路、港などの整備も必要ですが、これらにかかる維持費は馬鹿になりません。

 第二次産業に関しても土地については第一次産業とは異なる形で大事なところとなります。交通の要衝にあるなど、輸送に関することでは第一次産業以上に第二次産業では重要視されます。愛知など東海地方に工業関連の企業が集中するのは、愛知が古代から交通の要衝とする岐阜県美濃地方に近接しており、かつ名古屋港という港があるからです。そしてこれらを維持する輸送インフラの維持は同じく大変なわけです。

 第三次産業は輸送インフラや土地の性質などにも左右されますが、こちらは最も影響を受けるものが需要、すなわち人口でありますので、第三次産業は基本第一次第二次産業に左右されます。東京など大都市に専門店が集中するのは、全体に占める割合が少ない専門分野であっても人口の力によって求める人の数は多くなり、店を維持するほどの収益をあげることができるためであります。

 IT産業、情報通信産業はこれらと比べると、必須であるものは安定した電力と安定した高速な通信網です。通信網の維持自体は大変ではありますが、鉄道や道路などといった輸送インフラと比べると維持費は安くすみます。

 これが何を意味するかというと、今まで、そして現在輸送インフラの不充実により産業が衰退し、人口が流出する地方において、安く産業を維持できる情報通信産業は自地域に産業をつなぎ止め、創出し、人口の流出を食い止める切り札であるわけです。プログラミング教育はそうした情報通信産業を盛り上げるための人材育成に欠かせないのです。

地方の維持に必須である意識を

 そうした切り札も手入れをしなければさびるばかりですし、そもそも切り札を考えたところで実現しなくては絵に描いた餅です。プログラミング教育の趣旨や目的、基本的な考え方などの情報不足が取り組みを妨げていることから、まずはこうしたプログラミング教育によって促したい効果を把握し、そこから教育人材の確保というステップを踏む必要があります。

(参考)
プログラミング「地域格差」顕著に…小学校の取組状況
https://resemom.jp/article/2018/06/22/45258.html

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