プログラミング教育が2020年度に小学校で必修化されることはすでにご存じのことかと思います。しかし、プログラミング教育必修化といっても「プログラミング」という教科ができるわけではなく、既存の科目に混ぜ込む形となっています。
また、明確な必修時間数も設けられていないため、ただでさえ授業コマ数捻出に苦労している小学校では年数時間だけで終わる可能性もささやかれています。
今回はプログラミング教育必修化の一歩を踏み出した日本のお手本として、プログラミング教育先進国であるイスラエルのICT教育を紹介します。
20年前からICT教育に力を入れるイスラエル
日本ではあまりなじみのないイスラエル。どちらかというと、プログラマーを数多く輩出しているイメージが強く、街中でも多くの料理店が軒を連ねるインドのほうがピンとくる方も多いかもしれません。詳しい人ですとマイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラ氏が思い浮かぶかもしれませんね。ナデラ氏はインドのハイデラバード出身です。
しかし、イスラエルもインドに負けないくらいIT先進国です。同国は国民1人あたりのエンジニア数が世界一というデータもあります。この背景にあるのがプログラミングをはじめとするICT教育への注力です。
イスラエルでは必修化されていない時期を含むと1980年代からICT教育が始まっていました。一部の高等学校で「コンピュータサイエンス」という科目が提供されており、1990年代にはすべての高校で同科目が導入されました。この頃に教育を受けた現在の30,40代はビジネスやイスラエル国防軍の最前線で活躍しています。
高校卒業までにつけたい力から逆算して組まれたカリキュラム
イスラエルの教育課程では、高校を卒業した時点でプロ並みの活躍ができるようにカリキュラムが逆算して組まれています。高校でプロに近い開発をさせるため、必修としてプログラミングを90時間(週1~2時間ほど)、更に270時間、450時間の追加コースもあります。そのため、中学ではセキュリティやアプリ開発、小学校ではプログラミング・デバッグを習得させます。
この教育課程にはイスラエル独自の事情があります。イスラエルでは男女ともに高校卒業後、イスラエル国防軍へ兵役により入隊が義務づけられています。イスラエルは第二次世界大戦後、中東の地中海に面したところに建国されました。この場所にはイスラム教徒のアラブ人が多く住んでいました。しかしユダヤ教徒であるイスラエル国民にとって、バビロン捕囚とユダ王国滅亡から2500年以上ユダヤ人による国が消えて以来、やっと自国を建国することができる機会に、この地域は譲れない場所であり、アラブ人を追い出してでもここに建国したわけです。そんなイスラエルの周辺は、イスラエルが追い出したイスラム教徒が多く住む国々に囲まれているため、必然的に周辺国との仲が悪く、4回も大規模な戦争が起こり、今現在も多くの問題を抱えています。
そういった事情があるため、イスラエルは同盟国であるアメリカの介入があるまで自国だけで戦わなければいけません。ですので高校卒業までに軍にとって兵士として使い物になるレベルまで教育が施されています。ICT教育のレベルの高さはこういった事情ゆえに成り立っているのです。
日本と事情が違うイスラエルから学ぶこと
日本はイスラエルと異なり、軍事的脅威が差し迫るわけでもなければ、国内の産業が偏るわけでもないため、義務教育においては幅広い学問のチュートリアルといった要素もあります。
だからこそ新たに育っていく産業の基幹、チュートリアルであるプログラミング教育が、きちんとチュートリアルとして機能するレベル、プログラミングやデバッグなどが盛り込まれることが期待されます。
(参考)
日本は周回遅れ…イスラエルに学ぶプログラミング教育
https://www.fnn.jp/posts/00329400HDK
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