AIとは何?「強いAIと弱いAI」

 1980年、アメリカの哲学者ジョン・サールは論文の中で、人間の知能を人工的に作ろうとする取り組みを「強いAI」として批判しました。

 しかし、強いAI、弱いAIと言われても一体何が強いのか弱いのか、そもそもAI、人工知能とは何なのか、パッと思い浮かばないと思います。囲碁AIとして作られたグーグルのAlphaGoが2016年に「韓国棋界の魔王」イ・セドルを破り、翌年「大帝」として知られる柯潔を負かしたことは大きく報じられました。では、このAlphaGoは「強いAI」なのでしょうか?

 今回は昨今何かと話題になるAIについてお話しします。

人工知能の定義は決まっていない?

 そもそも、AI、人工知能とは何かを確認しましょう。人工知能と呼ばれると、ドラえもんや鉄腕アトムなど、「まるで人のような考え方をするロボット」が思い浮かびます。総務省が発表した「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究(2016年)」によると、人工知能に抱くイメージとして、日本では「コンピュータが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」が最も多いのに対し、アメリカでは「人間の脳の認知、判断などの機能を、人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術」という考えが最も多いとのことです。

 AIについて詳しくない人にとってのAIのイメージも国を超えれば大きく変わりました。では、専門家にAIの定義を聞くとどうなるのでしょうか。近代科学社から出版された、人工知能学会監修の書籍「人工知能とは」では13人の専門家にAIの定義を尋ねましたが、その回答はバラバラでした。

 これは、人工知能の研究というものは多くの分野があり、研究者全員が「鉄腕アトム」のような万能の人工知能の実現を目指しているわけではなく、一領域における機械による自動化を研究しているためです。

 このように、AIと叫ばれている現在においても、AIの定義というものは決まっていません。

 さすがにこれでは困ってしまうので、語源に立ち返って、「人によって造られた知能」とします。では、グーグルのAlphaGoに代表される、現代において「AI」と喧伝される人工知能は一体なんなんでしょうか?

キーワードは「人の思考」

 現在の人工知能、先ほど代表としてグーグルのAlphaGoをあげましたが、このAlphaGoは「過去の棋譜をニューラルネットに入力する「教師あり学習」と、勝利を報酬に囲碁AI同士を対局させて鍛える「強化学習(教師なし学習)」」(浅川,2016)によって、「魔王」と「帝王」を破り、世界最強の棋士となりました。

 この「教師あり学習」と「強化学習」と呼ばれるものは、現在幅広く使われているAIを実現するために使われているやり方で、機械学習に用いられる言葉です。機械学習とは、コンピュータにデータを学習させて、そこから特徴を導き出し、予測や判断などに使われています。こういった方法は自動運転などにも使われています。

 すなわち、今現在「AI」と呼ばれて皆が注目しているものは、データから特徴を見いだして、予測や判断を行う、情報分析が得意なもののことです。

 では、鉄腕アトムやドラえもんのような、「人と同じように考える人工知能」とは一体どういうものなのでしょう?

「人と同じように考える」というところを確認します。人の思考、言い換えると、人の学習とは何か。コンピュータ科学者かつ心理学者として知られる石川幹人氏によると、人の学習は「知ろうとする行為によって、意味作用が起きて、その結果として新たな知識が生まれる」(石川,2012)ものだとしています。「新たな知識」、これは答えが決まっていないものです。この答えが決まっていないものを考えることが、「人と同じように考える」ことだと言えます。

 この「答えが決まっていないものを考えること」を言い換える言葉があります。それは、「知性」です。多摩大学大学院の教授である田坂広志氏は、知性を「答えのない問いに対して考え続ける能力」と定義しています。

 つまり、鉄腕アトムやドラえもんは人工知能というよりも、人工知性と言ったほうが定義としてはあっているわけです。

「強いAI」、「弱いAI」

 「人工知能」と呼ばれるものの中には、「人工知性」と呼んだ方がわかりやすいものがあることは、人工知能の種類分けを見ても判断できます。

 人工知能には「特化型人工知能(AGI)」と「汎用人工知能(GAI)」の2つに分類ができます。前者が先ほどお話ししたグーグルのAlphaGoなど、今話題になっているAIです。後者はドラえもんや鉄腕アトムなどの「人工知性」です。

 ほかにも区別する言葉があります。これが冒頭に出てきた「強いAI」「弱いAI」です。ジョン・サールがこの言葉を生み出して、「強いAI」「弱いAI」論争が起こったがために前述した「特化型人工知能(=弱いAI)」や「汎用人工知能(=強いAI)」と言った言葉が生まれました。

 今回、AIとは何かという問いの中で、多くの人が思い浮かべるAI(=鉄腕アトムやドラえもん)と、現在活躍するAI(=AlphaGoなど)の違いをお話しました。ここにギャップがあると、「仕事がAIに奪われる」などの話題に対して要らぬ心配をしてしまうことになります。

 今世界で話題になっているAIはアトムではない。このことを元に、人工知能についての他の疑問をまたお話します。

(参考)
石川幹人 『人間とはどういう生物か ――心・脳・意識のふしぎを解く』(筑摩書房ちくま新書,2012)
総務省 『報告書2016 AIネットワーク化の影響とリスク ―智連社会(WINS)の実現に向けた課題―』(総務省,2016)

浅川直輝 『AlphaGoの「圧勝」から見えた、ディープラーニングの強みと課題』http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/031500477/
田坂広志 『特別講話 第4講』http://hiroshitasaka.jp/kouwa/5144/
松本健太郎 『人工知能って結局何なの? 知能と知性の違いから考える』
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1706/22/news011.html
下山輝昌 『機械学習の基本知識を押さえよう』
https://news.mynavi.jp/article/Python_ML-1/

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